米国長期金利とは、米国10年債利回りのことです。年初来(16年ぶり)高値は10月23日(月)の5.021%です。その後、11月1日(水)のFOMC後の記者会見におけるパウエルFRB議長のハト派発言と3日(金)の米国雇用統計悪化により4.484%まで急落しました。
現状では4.6%を挟んだ保ち合いです。米国長期金利が下落すればドル売りが定番で、実際にドル全面安が続きました。
米ドルの主要通貨に対する安値は、11/3(金)から11/5(月)で示現しています。
ところが、その後、ドル相場が急反発し、ドル円が再び150円を超える上昇だけでなく、ユーロドル、ポンドドル、豪ドル米ドルも下落に転じています。
ファンダメンタルな原因としては、米国長期金利は下げ止まり小反発のなか、相手通貨の長期金利は下落傾向であることです。
ドル円上昇のドル高要素について、日本10年債利回りが低下しているのでファンダメンタルズに整合的です。
それに加え、投機的な円売りが復活してきたようです。
今後のドル円相場について考察します。
目次
米国10年債利回りとドル円相場
ローソク足が米国10年債利回り、黒い太線がドル円の日足チャートです。
画像かテキストリンクをクリックすると、より詳細なチャートが別画面で開きます。
このチャートをご覧いただければ、米国長期金利が急落した割にはドル円レートの下落が限定的であることが分かると思います。それほどまでに日本の長期金利が下落したのかという観点では、下がっているのは確かですが、さほど変化はありません。もともと低金利なので変動幅はしれています。
ドル円の値動き(騰勢)を説明するには、再び円売りトレンドが戻ってきたということしかないでしょう。
欧米トレーダーはあと2週間で2023年の成績が決まる
欧米人の金融エリートたちは、11月第4木曜日のThanksgiving Day(感謝祭)まではがむしゃらに働き、その後は新年まで長い休暇期間に入ります。全く出社しない訳ではありませんが、2023年の成績が確定しているので、ゆったりと年度末の資産のリバランスなどを行うだけです。
相場から絶対的な収益を挙げることがノルマであるトレーダーについて、11月22日(水)までの残り2週間で2023年の成績が確定し、2024年の年俸が決まります。成績が悪ければ当然のことクビになる可能性もあります。
今年最後のテーマを円売りに定めた可能性
あと2週間で爆発的な収益を挙げ、2024年の年俸アップを勝ち取るために、円売りをテーマに定めた可能性が高いと思います。ドル円の年初来高値151.72への再チャレンジおよび為替介入を利用したトレードで短期で大きな収益を得るチャンスがあります。
個人トレーダーのドル円ロング(円売り)も遅れて活発化
OANDA証券のドル円オープン・ポジションです。左軸がショート、右軸はロングで、オレンジのポジションは含み益、ブルーのポジションは含み損の状態です。
10月31日(火)の高値151.72をつける以前、150円の手前で寸止めとなり相場が動かない期間が続きました。この時点では、個人トレーダーは為替介入期待のドル円ショート(円買い)が優勢だったのですが、為替介入なしにドル円は148.80の安値をつけることになりました。
結果的に個人トレーダーのショート戦略は成功した訳ですが、さほど大きな値幅を取ることはできませんでした。150円のショートをキープし続けたトレーダーは151.72に達する過程で踏み上げを食らった可能性もあります。
そこで、11月3日(金)の米国雇用統計発表後の安値149.19アラウンドから積極的にロングを拾いにきたという訳です。しかし、ロングポジションのピークは150.65となっており、決して値持ちが良いとは言えません。
欧米トレーダーたちの円売りで150円を超えたドル円の騰勢にちょうちんをつけにきた流れです。年初来高値の151.72までは為替介入はないという仮説を基に、遅ればせながら参入してきた訳です。
私個人的には、危ないロングポジションだと思いますので、安易にスワップポイント狙いのオーバーナイトはしないほうが良いと思います。151円絡みの高値では、アルゴリズム売買による介入もどきの急落(ときに2~3円)もあり得るので、できるだけ短期で手仕舞いすべきでしょう。
投機的な円売りはあと2週間で終わるか?
欧米トレーダーたちは、2023年の成績が確定したのに、日本の財務省に戦いを挑むようなリスクは取りにこないでしょう。
あと2週間以内に為替介入のレベルまで達しないのであれば、Thanksgiving Day(感謝祭)後のドル円は、緩やかな下落トレンドに移行すると想定しています。
期間内に為替介入のトリガーを引いてしまったとすれば、5~6円程度の押し下げとなり、145~147円台の押し安値を再度拾ってくる展開になるとは思います。もう一度、為替介入レベルまでの円売りを続けるかもしれませんが、時間切れとなる可能性が高いと思います。
【まとめ】ドル円は年初来高値更新、152円目途で為替介入が入る可能性あり
欧米トレーダーの腰の入った円売りが続き、個人投資家がちょうちんをつけて追従する状況が継続すれば、年初来高値151.72~152.00レベルで為替介入の可能性が高いと思います。
150円台前半のロングであれば、1円以上の値幅を抜けるチャンスがありますが、為替介入のトリガーを引く手前151.50あたりに利益確定の指値を入れておくべきでしょう。
150円台後半のロングは、利益が乗っているうちにできるだけ早く逃げるのが良いと思います。