【ハト派FOMCで円安危機に神風】長期金利は米国下落・日本上昇でドル円反落

こんばんは、上野ひでのりです。

11月1日(水)のFOMCは現状維持が確定的であったため、パウエル議長の会見に注目が集まりました。

【11日1日(水)FOMC利上げ確率0%】パウエル議長のタカ派発言でリスクオフ進行か?

【追いつめられる日銀】YCC廃止と利上げを催促される円安相場が果てしなく続く

前者の記事では、タカ派スタンスを想定していたため、長期金利(米国10年債利回り)は急反発をイメージしていました。
したがって、後者の記事で、「2022年の為替介入後と同様に、米国長期金利が急落する神風に期待するしかない」と述べた訳です。

米国10年債利回りは、現状4.726%まで急落し、日本10年債利回りは0.924%まで急騰しています。いわゆる米日金利格差は縮小しているので、ドル円は下落するのが理論的です。

10月31日(火)のYCC修正について、「植田日銀のバランス感覚は秀逸」と評価する人もいます。
日銀総裁就任前の経済学者(共立女子大学教授)の立場では、2022年7月の日経新聞への寄稿で「円安回避のための利上げは景気悪化招く」と述べていました。私も全くその通りだと思います。しかし、総裁に就任してからの植田氏はマーケットや政府の外圧に押し切られて、小出しに要求に応え続けているようにしか思えません。

2024年のYCC廃止とマイナス金利解除に向けて、日銀の独立性を堅持し計画通りに正常化を進めているのであれば、確かに抜群のバランス感覚で市場に織り込ませていると言えるでしょう。ドル円が150円を超える円安に右往左往した結果でないのなら、評価できるのかもしれません。

ともあれ、2023年の円安の最大の危機にも神風が吹いて、苦境を乗り切れる可能性が出てきましたので、今後のシナリオを考えてみましょう。

FRBパウエル議長は詰めが甘い可能性

ブルームバーグ
【パウエルFRB議長、利上げ終了の可能性を示唆-米金融市場は歓迎】

正確には、追加利上げの可能性も利上げ終了の可能性も否定しなかっただけです。「インフレのさらなる進展は、さらなる引き締めを正当化する可能性がある」と言及し、今後のデータ(経済指標)次第というスタンスを維持しています。

しかし、上記のようなヘッドラインが掲載されてしまうのは、株価急落中のマーケットの願望を色濃く反映しています。バラ色の願望が独り歩きしないように、これまでのパウエル議長なら、しっかりと釘を刺したはずです。
そうしなければ、せっかく最後の仕上げ段階まで来ているのに、長期金利は急落、連れて株価を始めとするリスク資産は急騰という流れで、米国景気の再過熱を招く可能性があるからです。

その結果、12月13日あるいは1月31日のFOMC会合で、もう必要がないと思われた追加利上げを余儀なくされる可能性もあります。
パウエル議長はもともとハト派のため、最後の詰めでタカ派になり切れなかったと私は思います。

米国10年債利回りは下落が続く可能性が高い


ローソク足は米国10年債利回り、黒い太線は日本10年債利回りの週足です。
画像かテキストリンクをクリックすると、より詳細なチャートが別画面で開きます。

政策金利の利上げ終了を織り込むのであれば、米国10年債のタームプレミアム(FRBの金融政策の不透明性に対して投資家が求める上乗せ金利)が縮小し、利回りが低下することは間違いありません。
パウエル議長が鬼になり切れなかったことにより、事実上の金融緩和を行ったのと同じ効果があると思います。

10月23日(月)の5.021%が2023年の高値で確定し、3.5%目途に下落の可能性が高いと思います。
株価は上昇し、米ドルは反落するでしょう。

日本10年債利回りは米国に連れ安しにくいか?

11月2日(木)に財務省が実施した10年物国債入札で、最高落札利回りは0.915%と11年半ぶりの高水準となりました。上限のめどの1%に肉薄しています。
上記のチャートでは、0.924%まで上昇していますが、早晩1%に到達するでしょう。
米国債は買い戻され、日本国債は売りやすくなりました。この傾向はしばらく継続する可能性が高いと思います。

11月3日(金)の米国雇用統計悪化であれば上記トレンドが加速か?

10月の雇用統計の非農業部門雇用者数において、UAW(全米自動車労組)ストで2.9万人の押し下げ効果があると推定されています。
現在の予想は、+18.0万人(前回+33.6万人)、失業率は3.8%(前回3.8%)、平均時給(前年比)は+4.0%(前回+4.2%)ということで、主要3項目が全て悪化に転じるので、米国債利回り低下、ドル安、株高となる可能性が高いと思います。

【まとめ】ドル円は下落、株価底入れ反発継続の可能性が高い

10月31日(火)の植田日銀の政策をあざ笑うかのように、マーケットは強烈な円売りを浴びせ、ドル円は年初来高値151.72まで急騰しました。
パウエル議長の発言が想定通りのタカ派であれば、FOMC通過後に2022年の高値151.94を突破、152円に到達すれば財務省の為替介入が発動されると想定していました。

しかし、パウエル議長のハト派スタンスが神風となり、円安の危機は当面去ったと思います。米国雇用統計の悪化が駄目押しになる可能性が高いと言えるでしょう。
為替介入なしに150円割れを示現できるとすれば、2年連続の危機をいずれも神風で救われたことになります。