「米ドルとGOLDは逆相関する」「安全資産の米国債が売り叩かれているのにGOLDだけ買われるのは理論的ではない」と下記の記事で述べました。
【イスラエル戦争に無関心な相場】原油ボラ低下と米長期金利上昇。GOLD続騰だけ例外
イスラエル戦争にイランが参戦して、ホルムズ海峡封鎖などの最悪の事態に発展すれば、下記のような現象が想定されます。
- WTI原油先物が100ドルを超える暴騰
- 安全資産である米国10年債の価格急上昇=利回り(長期金利)急低下
- 基軸通貨である米ドル上昇
- 避難通貨であるスイスフラン・日本円の上昇
- 安全資産のGOLD上昇
- 株価暴落
上記6つの現象を最悪のケースとして想定しつつ、現状と比較を行ってみましょう。なんだか不気味なサインが出ているようで気になります。
目次
長期金利上昇で米国株3日続落
米国株は3日続落で週末を迎えましたが、いまだ底堅く推移しています。続落の原因は一時5%を突破した米国10年債利回り(長期金利)の上昇です。これは理論的な値動きですね。
また、WTI原油先物がじわりと上昇しているのは、地政学的リスクを反映しており理解できます。
GOLDを買う動機が分からない
GOLDは、現物を保有しても金利はつかず、GOLD/USD(XAU/USD)の買いポジションでは金利の支払いが発生してしまいます。なぜこの時期にGOLDが急騰しているのでしょうか?
GOLD/USDは、2020年8月に2,075ドルの高値をつけ、2022年3月に2,070ドル、2023年5月に2,081ドルと史上最高値を更新しました。ここまでの大相場は主にコロナ渦における過剰流動性相場(カネ余り)が背景で、リスク資産だけでなく安全資産のGOLDにも資金が流入したからです。
2023年10月6日(金)には史上最高値から13.0%安の1,810ドルの安値をつけ、相場は徐々に軟化していました。
有事のGOLD買いか?
イスラエル戦争が勃発したのが10月7日(土)です。週明けの9日(月)からGOLD相場は暴騰し、20日(金)には1,997ドルの高値をつけました。
タイミング的には、「押し目からのテクニカル的な急反発」+「有事のGOLD買い」ですが、徐々に後者の意味合いが強くなっているようです。
戦争のリスクを嫌気しているなら、なぜ米国債が買われないのか?
米国債が不人気で継続的な売りが続いているので、利回りが上昇しているのです。米国10年債利回り(長期金利)の上昇の原因は、米国10年債の強い売り圧力が継続していることです。
11月17日(金)までの新年度暫定予算の期限はあっという間に到来し、政府機関一部閉鎖ともなればムーディーズがAAAからの格下げを行うことが確実です。このような不透明感から米国債が売られるのは分かるのですが、有事なら少しは買い戻されても良いものだと思います。
WTI原油先物の上昇は顕著ではない
GOLDが直近の安値をつけた10月6日(金)に、WTI原油先物も81.5ドルまで下落しました。9月28日(木)の高値94.9ドルから14.1%もの急落でした。そしてGOLDと同じく、週明けの9日(月)は窓開けで4%高から始まりましたが上値は重く、3日後には窓埋めとなったのです。
その後、急反発に転じましたが、20日(金)の高値は89.8ドルに留まり、急落からの戻りが鈍い状況です。
現状では戦争を嫌気した相場ではないが、なぜGOLDだけ上昇するのか?
先ほど「有事のGOLD買い」に傾いていると述べましたが、「有事」というのは戦争をイメージしたものではなく、株価暴落からの深刻な景気後退を想定している可能性があります。万が一の備えとしてGOLDを積み増しておこうという意図です。
50年前の第4次中東戦争勃発で石油危機を招き、株価は急落し世界的な景気後退となりました。このときに、今回と同じ「GOLD」「米国長期金利」「原油」のトリプル高という珍しい現象が起こっていたのです。
【まとめ】GOLDが史上最高値を更新するようなら最悪シナリオも
過去のパターンが簡単に当てはまる訳はないとは思うものの、今回のGOLD高は不気味です。
金利面でインセンティブが乏しいGOLDをあえて買い進む大口投資家たちは何を恐れているのか?
史上最高値に面合わせをして、あっさり急反落になる可能性も十分あり得るのですが、高値更新となった場合には、何か不吉なことが起こるサインと考えたほうが良さそうです。
1,950ドル手前での戻り売りを推奨していましたが、想定外の強さで特殊な状況となりましたので、しばらくは様子見が良いと思います。また続報をお届けしますね。